bS1 強欲怪人タビト

 僕の家のトイレには宇宙人がいる。僕がおっしこをしようとして便器の前に立つと、そいつ
は便器に溜まった水の底で静かに僕を見つめている。僕はそいつを目がけておしっこを放
つ。するとおしっこが水に飛び込む衝撃により水面が泡立ち、その宇宙人の姿は跡形もなく
消える。僕は満足してレバーをひねり水を流す。しかし、水が流れ終わり、新しい水が便器
に満たされ、水面のゆれがおさまると、不思議なことに“奴”は再び何事も無かったかのよう
に、水の底から僕を見つめているのである。

 以上、少年の頃の僕の回想です。僕の実家のトイレは、光の加減なのか何なのか便器の
底にいつも同じ模様が映り込んでいて、それが子供の頃の僕には宇宙人の顔に見えたんで
すね。後に怪獣のデザインを趣味にし始めてから、そういえば子供の頃そんなことを考えて
いたなあと思って、実家に帰った際にトイレの底をスケッチして出来上がったのがタビトのマ
スクです。小さい頃のイメージでは、もっとケムール人みたいな「強そう」というよりは「妖しい
」感じだったんですが、顔を赤と黒に塗ったら意外と迫力が出てしまって、子供の頃の僕がト
イレの底に見ていた宇宙人とは別物となってしまったような気がします。ちょっと残念ですね。